埼玉県

肉汁うどん

(にくじる)

甘辛コクのつけ汁うどん

昔ながらの少し色が付いた太めのうどんを、甘辛の温かい汁でいただきます。豚肉の旨味とコクが、モチモチのうどんによくあいます。

別名     狭山うどん、武蔵野うどん、 つけ肉汁うどん

特徴

武蔵野うどんは元々地元の郷土料理であり、原則として武蔵野台地で産まれた小麦粉を使用します(地産地消の考え方)。このうどんは、一般的なうどんよりも太く、わずかに茶色味がかかった色をしています。麺の加水率は低く、塩分は高めです。麺の食感は非常に強いコシがあり、力強い歯ごたえがあります(つるりとした感じではありません)。

食べる際には、麺をざるやもりうどんと呼ばれる器に盛り、つけ麺の汁をかけて食べるスタイルが一般的です。このつけ麺の汁は、かつお出汁を主体にしており、濃厚な味わいと甘みが特徴です。具としては、シイタケやゴマなどを混ぜたものを麺の上に盛り付けます。ネギや油揚げなどの薬味を加え、うどんに汁をからませて食べます。

本来、武蔵野うどんとは武蔵野地方でコシの強い手打ちうどんを指す言葉です。そして、天ぷらうどんのように具が多く入ったものではなく、糧(かて)と呼ばれる具(主に茹でた野菜)が付いています。しかし、商業店舗では最近、「肉汁うどん」や「きのこ汁うどん」といった具が多いバリエーションが「武蔵野うどん」として販売されています。

また、明治維新以前から北多摩の農村地域では、うどん汁に豚肉を入れていましたが、細切れの豚肉を具にした「肉汁うどん」などは明治時代中期以降に広まった食べ方です。

歴史

武蔵野台地は多摩川と荒川に挟まれており、その土壌は赤土の関東ローム層に覆われていますが、その上には作物の栽培に適した黒土の腐食土層があります。この関東ローム層は密度が高く、保水性に優れているため、理想的な地層構造となっています。

しかし、台地内には大きな河川がなく、水源が限られており、米作りには適していませんでした。そのため、武蔵野地域は江戸時代から小麦や大麦を中心とした農業が行われ、うどんはその中でも特に重要な郷土料理となりました。

水田が確保できなかったため、生活用水や小さな川を利用して水車製粉が行われ、歴史的にはうどんの根付いた地域であることが伺えます。

各家庭でうどんを手打ちする習慣があり、日常的に食べられていました。また、正月やお盆などの特別な機会には、本家に集まる親戚一同が集う席でのごちそうとしても欠かせない食べ物とされ、一部の地域では冠婚葬祭の後に「本膳」としてうどんが出されることもありました。このように、武蔵野うどんは地域の食文化と深く結びついています。

武蔵野では、「うどんが打てなければ女性は嫁に行けない」とまでいわれた時代があったほど、うどん作りは重要なスキルとされました。

製法

一般的に、うどんの製作は蕎麦と比較して時間がかかるため、店舗では小麦粉をこねて、コシを出すための足で踏む作業をあらかじめ済ませていることがあります。うどん打ちはガラス張りの部屋で行われ、順番待ちをしている間にその様子を見ることができることもあります。足で踏む工程は強いコシを出すための大切な要素です。

うどん打ちの手順は、まず太く短い棒を使って麺を徐々に伸ばしていきます。その後、細く長い棒に変えてさらに薄くし、円形に伸ばしていきます。一度麺を折りたたんで粉をなじませたら、再度棒に巻きつけて麺を屏風状に折り畳み、包丁で切ります。元の麺は円形なので、折り畳んだ際に端と中心で長さに差が生じます。包丁を使った手作業のため、麺の太さは異なることがあります。

うどんの汁は、主に削り節のだしを使ったものが一般的です。具を入れて温め、程よく冷ましたものを食べます。

他にも、具や油を使わずに出汁だけの冷たい汁を提供する店もあります。この汁は「冷汁」と呼ばれますが、武蔵野うどんとは異なるもので、「すったて」とは別物です。

Information

名称
肉汁うどん
(にくじる)