埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路は、首都圏の水害を防ぐために建設された治水施設です。延長約6.3km、国道16号直下約50mの深さに位置し、世界最大級の地下放水路として知られています。地下神殿と呼ばれる壮大な構造と、その機能美は多くの人を魅了しています。
放水路は、中川、倉松川、大落古利根川、18号水路、幸松川などの中小河川から洪水を江戸川へ流す役割を果たします。1993年に着工し、2006年に全区間が完成しました。公式愛称は「彩龍の川(さいりゅうのかわ)」で、その荘厳な内部の様子から「地下神殿」とも呼ばれています。
地下50mを流れる巨大な放水路
首都圏外郭放水路は、地下50mに設置された放水路で、全長約6.3km、内径約10mの規模を誇ります。この地下放水路は、周辺の中小河川が洪水となった際に、その水を江戸川へ流すことで洪水被害を軽減します。地上に設置しなかった理由は、地上での土地利用や地域分断のリスクを避けるためです。また、用地取得の時間を短縮する目的もありました。
水の勢いを調整する調圧水槽
調圧水槽は、地下放水路のトンネルから流れてきた水の勢いを調整し、江戸川へスムーズに流すための施設です。この巨大な水槽は地下22mの位置にあり、長さ177m、幅78m、高さ18mという規模です。天井を支える59本の巨大な柱が特徴で、その光景は「地下神殿」と称されるほど荘厳です。調圧水槽は、水のくみ上げと排水を安定したポンプ運転で行い、ポンプの緊急停止時には逆流を調節する役割も担っています。
首都圏外郭放水路の全施設は、庄和排水機場に設置された管理支所によって管理されています。この施設には、様々な撮影や取材に利用される「龍Q館」が併設されており、見学ツアーも開催されています。
首都圏外郭放水路の見学会では、人気の「地下神殿」こと調圧水槽をはじめ、通常非公開の作業用通路やポンプ室、ガスタービン部、インペラ部なども公開されます。見学コースは4つあり、どのコースも階段約100段の昇り降りが必要で、エレベーター・エスカレーターはありません。そのため、参加には自力での歩行が必要です。調圧水槽や立坑の床や階段は濡れている場合や暗く感じる箇所もあるので、足元にはご注意ください。
調圧水槽の見学
このコースでは、首都圏外郭放水路の象徴的な施設である調圧水槽を約55分にわたって見学します。施設の概要説明と自由見学時間があり、最大50名までの団体参加も可能です。壮大な空間と巨大な柱が特徴の調圧水槽の内部は、「地下神殿」とも呼ばれる荘厳な雰囲気を感じられます。
第1立坑の見学
このコースでは、深さ70メートルの第1立坑を見学します。作業用通路(キャットウォーク)を歩き、立坑内の階段を途中まで降りる体験が含まれており、その迫力を存分に楽しめます。高所作業となるため、安全装備としてハーネス(安全帯)とヘルメットを着用します。
ポンプとガスタービンの見学
このコースでは、首都圏外郭放水路の心臓部であるポンプとガスタービンを見学します。調圧水槽とポンプ室内を訪れ、ポンプの機能や役割について学ぶことができます。普段は見られないガスタービン部や減速機も間近で見学できる貴重な機会です。
インペラ(羽根車)の見学
このコースでは、調圧水槽最奥部にある巨大なインペラを特別装備で見学します。第1立坑から調圧水槽、排水ポンプのインペラまで水の流れを体感できる見所満載のコースです。参加者はヒップウェーダー(長靴)とヘッドライト付きヘルメットを装着し、深さ50cm程度の水の中を進みます。
首都圏外郭放水路は、洪水時に中川や倉松川などの河川からの増水を貯留し、江戸川に排水する機能を持つ巨大な洪水調節池です。2002年から供用を開始し、年平均7〜8回の頻度で稼働しています。この施設の完成により、倉松川流域などの洪水常襲地帯での洪水被害が大幅に減少しました。
特撮作品やプロモーションビデオのロケ地として
首都圏外郭放水路は、その独特の空間から特撮作品や映画、テレビドラマ、ミュージックビデオのロケ地としても多く利用されています。特に、ウルトラマンシリーズや仮面ライダーシリーズなど、多くの特撮作品で使用されています。施設の荘厳な雰囲気が映像作品に独自の魅力を加えています。
首都圏外郭放水路は、その壮大なスケールと機能性から、多くの人々に感動を与える施設です。ぜひ一度訪れて、その壮観と技術の粋を体感してください。