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八潮市立資料館

(やしおしりつ しりょうかん)

水と深く関わってきた歴史と文化を伝える拠点

埼玉県八潮市にある八潮市立資料館は、「水と生活」をテーマとした展示や貴重な歴史資料を公開する施設です。公文書館、郷土博物館、および文化財センターの役割を兼ね備えています。資料館の敷地内に明治9年に建てられた木造の民家「旧藤波家住宅」が移築されています。

展示

八潮市は東に中川、西に綾瀬川が流れる中川低地に位置し、川の恵みと災いを受けてきました。資料館の常設展示では、八潮の歴史的背景である「水と生活」をテーマに設定し、八潮の歩みを紹介しています。

中川と綾瀬川に挟まれた八潮の地における水運や染め物、水害との闘い、八條遺跡の出土品や伝馬船の模型などが展示されています。

八潮市および旧八條村・八幡村・潮止村の歴史公文書約2万冊や、当地の神社仏閣や学校に伝わる古文書、埼玉新聞、東武よみうり、とうぶ朝日、全国紙の埼玉版、市史編纂事業の際に作成したマイクロフィルム約1,000本を所蔵しています。

常設展「水と生活」

展示内容

展示内容の詳細

八潮の位置

中川低地の成り立ちから現在の八潮市までを映像やパネルで解説しています。低湿地に位置する八潮の特徴を知ることができます。中川低地の地層の様子がボタン操作で観察できる模型や、資料館の真下から採取されたボーリングサンプルも展示されています。

水辺での生活の開始―原始・古代―

縄文時代から平安時代まで、各時期の遺跡の出土品、古代の生活復元模型などが展示されています。これらの展示品からは、東京湾が関東平野の奥深くまで入り込んだ時代の台地上での生活から低地へと生活の場が広がる過程を追うことができます。八潮周辺地域が東京湾と北武蔵をつなぐ水運の拠点となっていたことも、八條遺跡の遺物からうかがえます。

川の利用―中世―

平安時代の武士の台頭から戦国期の後北条氏の勢力拡大まで、八潮とその周辺地域における武士団の様相を解説し、当時の人々の信仰を示す板碑などを展示しています。また、石碇など舟運関係の資料を展示し、利根川(現中川)や綾瀬川などの河川が流れる八潮が水運の拠点として栄えた様子も紹介しています。

水との闘い―近世―

江戸時代の八潮は20か村に分かれ、幕府領や旗本領が置かれていました。このエリアでは江戸時代の人々の生活と、古利根川(現中川)・綾瀬川・八條用水・葛西用水などの水との関わりを紹介しています。また、農村の支配に関する資料、交通に関する資料、信仰・文化に関する資料なども展示しています。

水を克服して―近代・現代、地場産業―

近代・現代の八潮の歩みを年表で紹介しています。明治22年(1889年)の三村(八條村・潮止村・八幡村)成立、昭和31年(1956年)の八潮村成立(三村合併)、昭和47年(1972年)の市制施行などが挙げられます。八潮では豊かな水を利用した地場産業が発展し、県の無形文化財に指定されている浴衣の柄染めを行う長板中型の作業工程、注染の道具類、船大工の道具や肥料・野菜を運んだ伝馬船の模型、白玉粉製造工程のパネルなどが展示されています。

旧藤波家住宅

藤波家は埼玉郡八條領後谷村の名主で、18世紀末頃に改姓しました。藤波家住宅は1876年(明治9年)築の入母屋造瓦葺の民家で、主屋は「角屋形式」と呼ばれる建物背面の一部を突き出した造りから直屋造りに改められました。現在は資料館の敷地内に移設され、保存されています。

建築の特徴

旧藤波家住宅は、瓦葺き屋根、檜柱、黒漆喰外壁仕上げといった特徴を持ち、明治初期の建築様式や意匠をよく残しています。平成7年に市有形文化財に指定されました。建替え前の主屋の主要部分を踏襲し、間口13間(約24m)、奥行5.5間(約10m)の直屋造りで、格式と財力をしのばせる大規模な民家です。

部屋の構造と意匠

藤波家住宅の主屋には、以下の部屋と意匠があります:

建築

敷地内には旧藤波家住宅の母屋が移築され、資料館も調和を取ったデザインで建設されました。1階には公文書や郷土資料を収集する資料庫、生産生業活動に使われた民具を収める収蔵庫、歴史資料を配架した閲覧室、市民のサークル活動に使われる会議室などがあります。2階は博物館として常設展や企画展が行われる展示室、3階は収蔵スペースとなっています。

歴史

設立の背景

八潮市では1976年(昭和51年)より市史の編纂事業が進められました。文献調査のために公文書や古文書が集められ、同年11月の市史編纂大綱答申では編纂終了後の資料館設置が立案されました。1979年の第2次総合振興計画基本構想には資料館開設計画が盛り込まれ、1985年4月には八潮市立資料館開設準備委員会条例が施行されました。

建設と開館

1988年5月より建設工事に着手し、翌1989年(平成元年)6月に竣工、同年11月23日に開館しました。当時、人口7万人台の八潮市が歴史公文書保存に対して大都市に引けを取らない熱意を持っていたことがうかがえます。

Information

名称
八潮市立資料館
(やしおしりつ しりょうかん)

春日部・越谷・久喜

埼玉県