旧坂東家住宅見沼くらしっく館(きゅうばんどうけじゅうたく みぬまくらしっくかん)は、埼玉県さいたま市見沼区にある古民家を活用した博物館です。この施設は、江戸時代後期に建てられた坂東家住宅を保存・復元し、地域の歴史と文化を伝える場として利用されています。
坂東家住宅は、江戸時代後期に3つの時期に分けて建てられた民家です。床上部分は、ほぞ穴の墨書から1857年(安政4年)の建築であることが判明しています。土間部分はこれより古く、裏手の八畳間は比較的新しいものの、建築時期に大きな隔たりはないと考えられています。茅葺の平屋の寄棟造で、正面には式台の付いた玄関があり、その奥には六間を持っています。東側には土間や厩舎、西側奥には便所や湯殿を備えています。
1991年(平成3年)10月3日には、当時の大宮市の有形文化財に指定されました。一度解体された後、ほぼ同じ位置に復元され、1996年(平成8年)3月31日に落成式を挙行し、同年4月16日に博物館として開館しました。
坂東家初代の助右衛門尚重は、紀伊国(現在の和歌山県)加田村の出身で、1675年(延宝3年)に江戸で暮らす傍ら、見沼の一角に入江新田を開発しました。しかし、下流の村の反対にあい、1718年(享保3年)に元の溜池に戻しました。その後、徳川吉宗が新田開発を推奨し、3代目の助右衛門尚常が再開発を幕府に願い出て、65町2反あまりを新田として開発しました。これにより「加田屋新田」と命名されました。
坂東家住宅が建てられたのは10代目の助次郎の時であり、その後も13代目の新助、14代目の貞市が大正から昭和にかけて北足立郡片柳村の村長を務めるなど、坂東家は地域社会において重要な役割を果たしました。
館内には、けん玉や万華鏡などの郷土玩具が展示されており、実際に手に取って遊ぶことができます。また、解体調査の際に発見された一分銀や郷土玩具などの民俗資料、軒菖蒲や正月飾りなどの年中行事に関する展示も行われています。
さらに、工芸教室や落語会などの催し物も定期的に開催されており、地域の文化を体験できる場として親しまれています。入場は無料ですが、工芸教室については材料費が必要となる場合があります。なお、博物館は原則として月曜日が休館日です。