高麗郷古民家は、埼玉県日高市にある、江戸時代末期から明治時代にかけて建てられた歴史的な古民家です。旧新井家住宅とも呼ばれ、国の登録有形文化財に指定されています。
この古民家は、母屋と客殿を中心に、納屋や2棟の土蔵などが点在しています。通りに面した石垣や白壁が、高麗郷の美しい景観を創り出しており、その当時の暮らしや文化を今に伝えています。
高麗郷古民家は、代々名主を務めた新井家の住宅であり、明治に入ると家主が村長を務めるなど、地域の行政を担ってきました。建物は数度の改修を経ていますが、母屋の一部の部屋は江戸時代後期の形式を残しています。母屋は六間取りの平面形式で、広い各部屋や土間部分が特徴的です。母屋の中央には、高貴な客を迎えるための式台があり、その格式の高さがうかがえます。
この古民家は2013年に国の登録有形文化財(建造物)の指定を受け、2014年に登録されました。江戸時代から続く建築様式と明治時代の改修が融合したこの古民家は、地域の歴史的価値を持つ建造物として大切に保存されています。
母屋は江戸時代末から明治時代前半にかけて建設されました。木造の入母屋造の2階建てで、平成5年に茅葺から瓦葺に改修されています。建物は桁行23.2m、梁間8.2mの規模で、各部屋は広々としており、格式高い座敷飾が施されています。特に、西側の2部屋は天井が高く、付書院と違い棚を配した奥の間が特徴的です。
客殿は明治30年に建築され、木造の入母屋造の2階建てです。平成10年に瓦の葺き替えが行われています。桁行122.8m、梁間5.8mの規模で、1階中央には式台が設けられています。屋根は伝統的な向唐破風で、彫り物が施されており、高い格式を感じさせる造りとなっています。南側には客間が設けられ、床、違い棚、付書院の座敷飾が整えられており、本格的な書院造りの様式が取り入れられています。
高麗郷古民家には、母屋や客殿以外にも、納屋、南土蔵、北土蔵、作業場、茶室設備などが存在します。これらの施設はそれぞれに独自の歴史と特徴を持ち、訪れる人々にさまざまな時代の建築様式や生活文化を紹介しています。
納屋は軒反や下見板張りの腰壁、漆喰壁に設けられた横連子窓の意匠が特徴的です。南土蔵は規模が大きく、堂々とした容姿を持っています。一方、北土蔵は標準的な規模で、南土蔵とは対照的な趣です。作業場は平成24年度に新築され、屋外事業に伴う作業場として利用されています。また、平成23年度に新築されたトイレは景観に溶け込んだ外観となっており、施設全体の雰囲気を損なうことなく設置されています。
高麗郷古民家は、歴史的な価値を持つ建物群として、今なお地域の人々や観光客に愛され続けています。その保存と活用を通じて、未来に向けて伝統と文化を次世代に伝える役割を果たしています。