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岩殿観音 正法寺

(いわどの かんのん しょうぼうじ)

自然豊かな環境の中に佇む、1300年以上の歴史を誇る古刹

埼玉県東松山市にある岩殿観音の呼び名で親しまれる正法寺は、真言宗智山派の寺院で、山号は巌殿山です。坂東三十三ヶ所第十番札所として、古来より信仰を集め、門前市をなした古刹です。

戦国時代には武田勢の松山城攻めの時の本陣が置かれたということです。推定樹齢700年を超える大イチョウをはじめ、歴史ある建物や美しい自然が調和し、多くの人々から親しまれています。

歴史

寺伝によれば、養老2年(718年)に沙門逸海が千手観音像を刻み開山し正法庵と称し、鎌倉時代初期に源頼朝の命で比企能員が復興しました。源頼朝の妻北条政子の守り本尊だったと伝わっています。室町時代には、西国、秩父と合わせて百観音札所として巡礼が盛んになり、岩殿観音門前も賑わいを増しました。多くの僧坊が立ち並び、関東随一の伽藍を誇る寺院となりました。

戦国時代には、周辺の戦乱により多くの建物が焼失してしまいましたが、天正2年(1574年)に栄俊が中興開山となり、天正19年(1591年)に徳川家康から寺領二十五石の朱印地を与えられ、大きく発展しました。多くの参拝者が訪れ、門前町も賑わいました。

明治維新の廃仏毀釈の影響を受け、多くの寺社が衰退する中で、岩殿観音も大きな打撃を受けました。しかし、人々の信仰心の支えとなり、現在に至っています。

境内の見どころ

観音堂

観音堂は養老年間の創建と伝えられ、寛永、天明、明治の3回再建されました。現在の建物は明治11年(1871年)の火災により焼失し、翌年に高麗村白子(現飯能市)の長念寺から移築されたものです。本尊の千手観音は室町時代の作と伝えられています。

本堂

本堂には阿弥陀如来が祀られており、回向法要を修するお堂です。百畳の広さがあるため、百畳間とも呼ばれます。向かって正面には阿弥陀如来立像、左に阿弥陀如来坐像、右には明版大蔵経が祀られています。

薬師堂

天正19年に徳川家康より土地の寄進を受けた際に薬師堂が建立されましたが、寛永年間に焼失し、その後現在の堂宇が再建されました。薬師堂には明治20年の春に信州善光寺三尊阿弥陀如来を分身安置し、薬師如来と十二神将、善光寺阿弥陀如来が祀られています。

百地蔵堂

百地蔵堂には弘法大師空海の作との伝がある地蔵菩薩が祀られています。両脇には地蔵菩薩の像が並べられ、百のお地蔵様が祀られています。長寿健康や子どもの無事成長にご利益があるとされています。

仁王門

仁王門は表参道から石段を少し登ったところにあり、「巌殿山」の額を掲げています。左右には仁王像があり、右手に本堂、長い階段を登ったところに観音堂があります。平成四年の解体修理時に、運慶作のものは江戸時代に焼失し、現在の仁王像は文化年間(1808-1814年)に再建されたものと判明しました。現在の仁王像は平成の解体修理時に漆を塗り直され、漆の保護のため紫外線カットガラスに覆われています。

銅鐘(梵鐘)

元亨2年(1322年)に鋳造されたもので、外面には無数の傷が付いています。これは天正18年(1590年)に豊臣秀吉による関東征伐の際に、山中を引き回した時の傷だと伝えられています。

鐘楼

鐘楼は元禄15年(1702年)に作られたもので、屋根は萱葺きの寄棟作りです。装飾は控え目ですが、往時には朱が塗られていたとされ、ところどころにその痕跡が残っています。東松山市内で最も古い木造建築です。

六面幢

天正10年(1582年)に正法寺の僧、道照が建立したもので、埼玉県史跡に指定されています。

判官塚

比企能員の孫である員茂が1218年頃、能員の菩提を弔うために岩殿観音の南東の地である南新井に塚を築いたものです。大東文化大学東松山キャンパス拡張工事に伴い、現在地に移転しました。

石仏

境内を囲む石崖には石仏が安置されています。これらは百観音(西国、坂東、秩父札所)と四国八十八ヶ所の写本尊であり、百観音と四国八十八ヶ所を参拝したのと同じ御利益が得られると言われています。

文化財

大イチョウ

推定樹齢は700年を超え、周囲は11mあり、埼玉県内でも最大級の大きさです。江戸時代には養老木と呼ばれ、多くの女性に安産・子育守護の対象として信仰されました。紅葉の見頃は11月下旬から12月で、この時期には夜間のライトアップも行われます。東松山市指定文化財です。

参道

仁王門から東にまっすぐに延びる表参道の両脇には家が建ち並んでおり、かつての正法寺と門前町の繁栄の面影を残しています。しかし、実際に商店の建物のまま残っているのは丁字屋旅館と向かいのうどん屋のみです。参道にはいくつか屋号のある家が残っており、昔からの門前町の雰囲気を感じられます。ただし、参道は車両の通行には適さず、正法寺への参拝者は県道脇の駐車場から観音堂へ直接来ることがほとんどです。

Information

名称
岩殿観音 正法寺
(いわどの かんのん しょうぼうじ)

川越・東松山

埼玉県