埼玉県比企郡吉見町にある吉見百穴は、古墳時代後期の横穴墓群として知られ、国の史跡に指定されています。200基を超える数の横穴が岩山に開けられ、その神秘的な光景は多くの人を魅了します。
埼玉県比企郡吉見町にある遺跡は、古墳時代の末期(6世紀末〜7世紀後半)に造られたもので、現在でも219基の横穴が現存しています。これらの横穴は丘陵や台地の斜面に掘削されており、墓として使用されていました。
吉見百穴は、凝灰質砂岩の岩山に掘られた横穴墓群で、一見異様な景観を呈しています。穴の数は219個あり、日本国内でも最大規模の遺跡です。各横穴の入り口は直径約1メートル程度で、内部はやや広くなっていることが多いです。古墳時代後期に造られたもので、多くの穴には台座状構造があり、ここに棺桶が安置されていたと考えられています。また、穴の周囲には緑泥片岩で作られた板状の蓋が取り付けられており、追葬が行われた証拠とされています。
吉見百穴の岩山の下方には、天然記念物「吉見百穴ヒカリゴケ発生地」があります。この地域は関東平野では非常に珍しいヒカリゴケの自生地であり、1928年(昭和3年)11月30日に国の天然記念物に指定されました。しかし、近年は乾燥化の進行によりヒカリゴケの減少が見られ、湿度を保つための保存対策が講じられています。
太平洋戦争中、吉見百穴の岩山の地下には中島飛行機の地下軍需工場が建設されました。このため、岩山の最下部には直径約3メートルの大きなトンネルが碁盤の目状に掘削され、工場の出入口として3か所の坑口が設けられました。この際、元から存在していた横穴が十数個崩壊し消滅しています。現在、これらのトンネルの奥は危険なため、立ち入りは禁止されています。
吉見百穴の異様な景観や素掘りのトンネル跡は、特撮番組のロケ地としても使用されています。特に「仮面ライダー」や「ウルトラマンシリーズ」などの実写特撮番組での撮影が行われてきました。
吉見百穴は国の史跡に指定されており、さらに「吉見百穴ヒカリゴケ発生地」も国の天然記念物に指定されています。これらの文化財は、吉見町の重要な歴史的・自然的資産として保護されています。また、吉見百穴の北東約2.5キロメートルには、同時代の遺跡「黒岩横穴墓群」も存在しています。