埼玉県鶴ヶ島市脚折町にある白鬚神社は、古くから地域の人々に親しまれてきた神社です。全国にある白鬚神社の一つで、社殿の前には鮮やかな朱色の鳥居が立ち、訪れる人々を迎えます。鳥居をくぐると、樹齢900年を超えるケヤキなど、神聖で涼しい空気に包まれるのが特徴です。
特に、4年に一度行われる「脚折雨乞い」は、国の選択無形民俗文化財に指定されており、地域の伝統文化として大切にされています。
拝殿へ向かう道の左側には、今年の干支である虎の絵馬が数多く掛けられており、訪れる人々の祈りや願いが感じられます。拝殿で参拝を済ませた後、神社の裏手に回ると、埼玉県指定天然記念物である脚折のケヤキがそびえ立っています。このケヤキは樹齢900年以上とされ、青空に向かって力強く伸びるその姿から、訪れる人々に元気を与えます。
脚折雨乞の行事は、この白鬚神社の横で行われます。龍蛇の組み立て、修祓(おはらい)、入魂の儀、そして龍神への御神水献水がここで行われます。脚折雨乞は、国の選択無形民俗文化財および市指定無形文化財に指定されており、4年に一度の夏季オリンピックの年に行われます。巨大な蛇体を作り、雷電池へ導くことで降雨を祈願するこの行事は、地域の伝統を守り続けています。
白鬚神社は、奈良時代に創建されたと伝えられており、武蔵国を開拓するためにこの地に居住した高句麗人たちによって築かれました。彼らは高麗郡に26の神社を創建し、それぞれを村の鎮守として崇敬しました。その中で特に有名なのが日高市の高麗神社です。江戸時代頃までは、和田、高倉、大六道(上新田)、小六道(中新田)、太田ヶ谷、針うり、脚折の7村の総鎮守として崇拝され、明治時代以降は村社として存在しています。
白鬚神社には、拝殿、文化財収蔵庫、脚折会館といった施設があります。文化財収蔵庫は、正月三が日の期間に公開され、多くの文化財が収められています。脚折会館は、地域住民の集会などに使用されています。
脚折白鬚神社十一面観音菩薩立像
この仏像は市指定有形文化財で、文化財収蔵庫に収められています。室町時代に制作され、高さ42cmの寄木造りの仏像で、金色に塗られた美しい姿が特徴です。頭部に十一面を持ち、花の入った花瓶を手にしており、蓮の花の台座に立っています。十一面は、この仏様があらゆる人々を救うために様々な姿に変わることを表しています。
白鬚神社棟札・銘札
これらは市指定有形文化財で、天正2年(1574年)から享保12年(1727年)の間に作られた8点が文化財収蔵庫に収められています。棟札は建物の建設や修理時に記録され、銘札は奉納者や奉納内容を記録したものです。これらの札から、当時の脚折村や近隣の村々が白鬚神社を大切にしていたことがわかります。
脚折のケヤキ
このケヤキは埼玉県指定天然記念物で、白鬚神社の御神木とされています。樹齢900年以上の大樹で、昭和47年の台風で大枝が折れた後、防腐処置が施され現在に至っています。
脚折雨乞(すねおりあまごい)は、埼玉県鶴ヶ島市に伝わる雨乞い行事です。巨大な蛇体を作り、雷電池へ導いて降雨を祈願します。かつては旱魃の年に行われていましたが、近隣の住宅地化と専業農家の減少により、1976年以降は4年に一度行われるようになりました。竹や麦藁で作られる龍蛇は、長さ36m、重さ3tになる巨大なもので、白鬚神社での祈祷を経て雷電池まで練り歩かれます。
伝承によると、かつて雷電池には雷や雨をつかさどる大蛇が棲んでおり、祈ると雨が降ると信じられていました。しかし、寛永年間の新田開発により池が狭くなり、大蛇が群馬県の板倉雷電神社に移ったため、効果がなくなりました。その後、板倉雷電神社で降雨祈願をし、その池の水を持ち帰ると雨が降るようになったと言われています。