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ちちぶ銘仙館

(めいせんかん)

独特の美しさを誇る絹織物、伝統工芸の魅力

ちちぶ銘仙館は、埼玉県秩父市に位置する織物に関する資料館で、昭和5年に建造された旧埼玉県繊維工業試験場秩父支場本館を利用しています。平成13年には、国の登録有形文化財に指定され、その歴史的価値が認められています。館内では、『秩父銘仙(ちちぶ めいせん)』の歴史や関連する展示品を見ることができ、また型染めや織りの体験も楽しむことができます。

歴史と設立の目的

ちちぶ銘仙館は、秩父織物や銘仙に関する貴重な民俗資料を収集、保管し、それらを後世に伝えることを目的に設置されました。また、伝統的な技術を継承し、広く一般に紹介することを目指しています。芝桜で有名な羊山公園に近く、昭和初期の特徴的な建築様式を残した本館やノコギリ屋根の工場棟など、歴史的建造物も見どころです。

展示内容と体験プログラム

館内には、秩父銘仙の歴史を紹介する展示物が豊富に揃っています。織物見本帳や関連文献、そして秩父銘仙の製造過程を実演するコーナーも設けられています。特に、毎月第2土曜日には、繭から糸を取り、捺染し、織り機で織るまでの全工程の実演が行われ、訪れる人々はその貴重な技術を間近で見学できます。さらに、型染め体験や手織り体験など、実際に作業を体験するプログラムも提供されており、短時間で完成する作品を作ることができます。

秩父銘仙の歴史的背景

秩父銘仙は、平織りで裏表が無く、鮮やかな色使いが特徴の織物です。「ほぐし捺染」という独自の技法で作られる模様や色合いは、「玉虫効果」と呼ばれる角度によって変わる色彩が魅力です。かつて、秩父地域は織物産業が盛んで、大正から昭和初期にかけては全国的に人気を博しました。市民の約7割が織物産業に従事していた時代もあり、秩父銘仙は地域経済の基盤を形成していました。

施設の特徴と建築様式

ちちぶ銘仙館は、旧埼玉県繊維工業試験場秩父支場として1930年に建設されました。本館は、巨大な玄関ポーチを正面に配置し、著名な建築家フランク・ロイド・ライトが考案した大谷石積みの外装が特徴的です。工場棟にはノコギリ型の屋根があり、上部の北向きの窓から自然光が入る設計で、終日一定の明るさを保つ工夫がされています。これらの建物は、2001年に国の登録有形文化財として指定されました。

展示と販売コーナー

館内には、秩父銘仙に関する資料やアンティーク銘仙、織物業に関する歴史的資料が展示されています。また、展示販売コーナーでは、地元の織元が手掛ける製品が販売されており、反物やストール、巾着、コースターなどの製品を購入することができます。これらの商品は、生活様式の多様化に対応した室内用品へと変化してきた秩父銘仙の現在の姿を示しています。

秩父銘仙の伝統技術

秩父銘仙の製造には、「ほぐし捺染」という技法が用いられます。これは、坂本宗太郎氏によって明治41年に特許を取得された技術で、経糸に粗く緯糸を仮織し、型染めを施した後、仮織りした緯糸を手でほぐしながら織り上げるものです。この技法により、表裏が同じように染色された生地が生まれ、独特の玉虫効果が得られます。この伝統技術は、今もなお継承され続けており、見学や体験を通じてその技術の素晴らしさを学ぶことができます。

国指定伝統的工芸品としての秩父銘仙

2013年12月26日、秩父銘仙は国の伝統的工芸品に指定されました。これにより、後継者育成や需要開拓のための事業に対して国の財政的支援を受けることができるようになりました。さらに、全国の伝統的工芸品の物産展等への出店も可能になり、秩父銘仙の魅力を広く伝える機会が増えています。

ちちぶ銘仙館は、伝統的な織物の魅力を学び、体験することができる貴重な施設です。多くの人々にその美しさと技術の素晴らしさを伝えるため、様々な企画展や体験プログラムが用意されています。訪れた際には、秩父銘仙の豊かな歴史と伝統に触れ、素晴らしい体験をしてみてください。

Information

名称
ちちぶ銘仙館
(めいせんかん)

秩父・長瀞

埼玉県