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天空の寺 大陽寺

(てんくうのてら たいようじ)

秩父の山奥の樹林の中にひっそりと佇む、鎌倉時代後期に仏国国師によって開山された寺です。山の頂上に位置するため、「日本のマチュピチュ」とも呼ばれています。

大陽寺で泊まる宿坊体験は、初めての人にも楽しめると評判で、日本人だけでなく海外からも多くの人が訪れています。

ここでは厳しい修行はありません。ゆっくりと大自然の中で過ごす時間は、忙しい日々に慣れた自分を癒してくれます。

大陽寺は700年以上の歴史があります。仏国国師は後嵯峨天皇の皇子であり、修行の場所を求めて各地を巡っていました。そして、法鳥の導きに従ってここに辿り着き、寺を建立しました。

仏国国師はこの地で厳しい修行に打ち込み、里に降りることなくヒゲも伸ばし放っていたため、「ヒゲ僧」として知られるようになりました。

仏国国師の修行中の姿から、「天狗が住む」という伝説が広まりました。江戸時代に入ると山岳信仰が高まり、人里離れた「天狗が住む」という大陽寺は聖地として崇められ、寺の繁栄につながりました。

江戸時代にできたといわれる大陽寺の山道の表参道は、緑に苔むした十三仏の石仏があります。また、お寺までの距離を示す丁石なども並んでいます。

昔は東国女人高野山として知られていて、秩父十三仏霊場の一つです。江戸時代には山岳寺社のほとんどが女人禁制でしたが、大陽寺は数少ない女性が参拝できる寺社として、多くの参拝者でにぎわいました。

宿坊も営業しており、写経や座禅の体験もできるため、人気があります。

お寺の敷地内に足を踏み入れると、静寂さが漂います。耳に入ってくるのは、風に揺れる葉や小鳥のさえずりといった普段聞こえない音です。

深呼吸すると爽やかな森林の香りが体中に広がり、思わずほっとします。ここでは自分のペースで過ごせる心地よい自由さがあります。

春から秋にかけては宿泊ができる朝夕の食事付き宿坊プランがあり、坐禅や写経などの体験が自由参加できます。

本殿の縁側は長く広がっており、太陽の光が差し込んでいます。ここで写経をするのに最適な場所です。筆ペンでお経を一文字ずつなぞると、頭の中がクリアになっていくでしょう。

自然を満喫できる露天風呂もあります。この露天風呂は絶景を独り占めすることができます。驚くべきことに、住職自らが手作りしたものだとか。夜には星空を眺めることもできます。

そして、美味しい食事も大陽寺の魅力の一つです。精進料理で、肉や魚は使わず、野菜だけで調理されます。栄養バランスも考慮されたヘルシーな料理で、野菜の旨みが口の中に広がります。季節感を感じる献立が提供され、住職自らが一人で調理しています。

朝食には「けんちん汁」が登場し、しいたけの出汁に豆腐やにんじん、大根が入っており、食べ応えのある一品です。晴れた日には縁側で朝食を楽しむこともできます。

また、お寺の立地を生かした坐禅もおすすめです。特等席での坐禅体験や廊下での坐禅も行えます。廊下からは壮大な自然のパノラマが広がります。大自然の一部となる感覚を味わいながら、心地よい朝の時間を過ごすことができます。

最近では週末だけでなく平日も多くの人が訪れ、リピーターも増えているそうです。

四季折々で異なる雰囲気を楽しむことができるだけでなく、大陽寺の優しい空間に引かれて通い続けたくなるのは、自然体で過ごせる心地よさがあるからかもしれませんね。

厳しい修行はなく、大自然の中でリラックスできる時間は、忙しい日々に疲れた自分をやさしく癒してくれます。

大陽寺は山に囲まれ、森林に包まれたお寺で、携帯電波も届かず、秩父鉄道の終着駅である三峰口駅から11キロメートル離れた山奥にあります。

駅から歩いて行くと2時間以上かかりますが、宿泊する場合は事前に予約すれば駅からの送迎があります。

仏国国師

仏国国師は後嵯峨天皇の第二皇子である高峰顕日(こうほう けんにち)といいます。彼は南北朝時代を迎える混乱期に生き抜くため、16歳で出家しました。

雲巌寺という寺院で開山となりました。後に鎌倉幕府執権の北条貞時やその子である高時に師事し、鎌倉の万寿寺、浄妙寺、浄智寺、建長寺の住職を歴任しました。

彼の門下からは夢窓疎石などの優れた弟子が育ち、関東地方の禅林の主流を形成しました。

大陽寺にて一人の弟子が心配そうに「師匠、こんな山奥で仏教を学ぼうとしても、教本がないですよね」と仏国国師に言いました。

別の弟子も「こんな山奥で仏様を拝もうとしても、拝むべき仏様がいないですよね」と指摘しました。

すると、仏国国師は静かに答えました。「この場所には学ぶための教本がないと言っているが、本当にそうだろうか。耳を傾けてみなさい。遠くからは渓谷の音、近くでは小鳥たちのさえずりが聞こえます。確かに文字で書かれた教本はここにはありませんが、今聞こえているこの声、これほど素晴らしい教本は他にあるだろうか」

「拝むべき仏像がない。確かにそうだろう。しかし、この場所で本当に仏像が必要なのだろうか。目の前には天にも届きそうな山々がそびえ立っています。ここには下界の人々が大切にするような仏像はありませんが、そのおかげで目の前の大自然や鳥たちの中にも仏様が宿っていることを感じることができないか」

「お前たちは仏教、仏教と言っているが、それほど仏教が重要ならば、お前たちだけでそのお寺に行けばいい。ここには仏教や宗教、人間が作り上げた教団のようなドロドロしたものを持ち込まないでくれ」

大自然を先生とし、そこから学ぶ。この教えは今でも大陽寺の座禅の根幹をなしています。

Information

名称
天空の寺 大陽寺
(てんくうのてら たいようじ)
リンク
公式サイト
住所
埼玉県秩父市大滝459
電話番号
0494-55-0862
アクセス

三峰口駅より車30分

関越自動車道花園IC

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