「しゃくし菜」が晩秋霜に合い、味が乗った頃に収穫して漬け込む、地域・作季限定のお漬物。11月になると直売所にしゃくし菜が並び、家庭用に買われ、各家庭でしゃくしな漬を作るのが秩父の晩秋の風物詩である。白菜にはないシャキシャキした食感で、歯切れがよく、乳酸発酵が進んで古漬けになるとべっこう色になって、より一層風味が増す。埼玉県の「ふるさとの味認定」を受け、「ふるさとの味伝承士」により、普及活動が展開されている。
旬 11月 12月
歴史
伝来
中国の華中地方の揚子江一帯で作られていた体菜が、明治初期に中国より伝来し、土着して「雪白体菜」になったとされています。各地で栽培されてきましたが、白菜の普及により姿を消していきました。星川清親によれば、しゃくし菜は「結球ハクサイが普及するまで、日本の漬け菜生産の首位を占めていた」とのことです。一部の地域では今でも産地として残っています。埼玉県の産地には秩父地方や深谷市が含まれます。
秩父としゃくし菜
秩父地方では、郷土野菜や伝統野菜として知られています。この地方は寒冷な冬が特徴で、土壌が粘土質や石が多いため、長大根の生育が難しい状況でした。そのため、しゃくし菜が長大根や白菜の代わりとして栽培されるようになりました。
秩父地方の厳しい寒さのため、しゃくし菜は保存食として利用されてきました。地域の気候に適したしゃくし菜を用いて保存食が作られてきました。しゃくし菜漬けは秩父地方の伝統的な漬物となり、秩父の晩秋の風物詩とされています。これは家庭ごとに作られ、秩父の食卓には欠かせないソウルフードとされています。同様に、長野県木曽地方のすんき漬けも同様の保存食として知られています。
特徴
この植物の花びらは鮮やかな黄色をしており、食用部分である根生葉は長さが25センチメートルから50センチメートルほどで、鮮緑色で丸みを帯びた形状をしています。葉はやわらかく、巨大なチンゲンサイに似た形をしており、茎は肉厚で純白色です。全体の草丈は約45センチメートル程度です。この植物は、株元が太く多くの葉が重なっているため、土が残りやすいという特徴があります。
栽培
この植物は耐暑性と耐寒性が強いため、1年中栽培することができます。種を播く時期は8月から11月で、葉が14枚から16枚に成長する10月から1月に収穫されます。しかし、ダイコンサルハムシやカブラハバチ、キスジノミハムシなどの害虫がつく可能性があるため、適切な時期に農薬をまいたり、防虫ネットを使用して対策を行うことが重要です。種をまく時期が早すぎると害虫の発生が増えることがあるので注意が必要です。
利用
しゃくし菜は、茎と葉の両方が風味豊かであり、味は淡泊です。そのため、煮物や漬け物、お吸い物や和え物、油炒めや炒飯といった炒め物、饅頭やおやきの餡としても利用されます。
しゃくし菜漬けの特徴
しゃくし菜を漬けたものをしゃくし菜漬けと呼びます。しゃくし菜漬けの特徴は、塩だけでなく乳酸発酵も利用して漬けられる点と、塩分が控えめでほどよい酸味がある点です。乳酸菌がこの漬物のおいしさを引き立てています。しゃくし菜漬けは、野沢菜漬けやキムチと同様に乳酸発酵を利用した漬け物であり、見た目も似ています。
漬け物にすると、しゃくし菜はシャキシャキとした歯ごたえがあり、色も緑を保ち、美しい艶が生まれます。古漬けになると色がべっこう色に変わり、酸味が強くなります。
しゃくし菜漬けの利用
しゃくし菜漬けは、混ぜご飯や炒め物、和え物などに利用されます。和える際には、ごま油や唐辛子などが使われることもあります。
また、石川漬物は2023年に新しい味のしゃくし菜漬けとしてカボスを使用した漬物を開発し、秩父経済新聞によると、これが新たな試みとして注目されています。埼玉県のアンテナショップ「そぴあ」では、しゃくし菜漬けが総合売上の2位に選ばれるなど、人気のある商品として広く認知されています。
栄養価
しゃくし菜は緑黄色野菜であり、そのためβ-カロテンが多く含まれています。また、小松菜と同じように、カルシウムやビタミンKも豊富に含まれています。ただし、野菜のカルシウムは吸収が難しいため、吸収を助ける栄養素であるビタミンDなどを含む食材と一緒に摂ることがおすすめです。また、しゃくし菜にはカリウムや葉酸も多く含まれており、しゃくし菜漬けには乳酸発酵を利用するため乳酸菌の善玉菌が多く含まれ、食物繊維も豊富です。これにより、おなかを整える効果も期待できます。さらに、しゃくし菜は低カロリーな食材です。
しゃくし菜を油で炒めると、しゃくし菜に含まれるβ-カロテンの吸収を助ける効果があります。