埼玉県秩父郡長瀞町にある長瀞町郷土資料館は、秩父地方の歴史と文化を深く掘り下げることができ、山村の生活と民俗文化を伝えるための施設です。国の重要文化財である、敷地内には移築された旧新井家住宅は、江戸時代の養蚕農家の暮らしを今に伝えています。
長瀞町郷土資料館は、宝登山の山麓に位置し、「長瀞町緑の村」の施設として、昭和55年に開館しました。以来、地域の歴史や文化を伝える役割を果たしています。資料館には、養蚕の道具をはじめ、機織り道具や自給自足のためのむしろ織機・足踏み縄ない機など、山仕事や農具などが展示されています。
国指定重要文化財の旧新井家住宅が隣接して建てられています。旧新井家住宅は約270年前に建設された養蚕農家で、もともと大字中野上にありましたが、この地に移築されました。建物の特徴は、屋根が板葺きであることです。手頃な大きさに割った栗板を並べ、それを石で押さえるというこの屋根は、かつて秩父地方で多く見られましたが、現在では旧新井家住宅だけがその姿を残しています。
郷土資料館は、長瀞町を中心に収集した機織り機や石臼など、かつての生活を偲ばせる生活用具といった民俗資料を展示しています。常設展示では、パネル展示を中心に長瀞町の歴史を大きく「太古」~「古代」~「中世」~「近世・近代」の4つの時代に分けて、それぞれの時代に沿って長瀞町の特色を紹介しています。
「日本地質学発祥の地」としての長瀞の歴史をはじめ、日本一の大きさを誇る「野上下郷石塔婆」の解説があります。観光地・長瀞の歴史を解き明かす貴重な民俗資料も数多く展示されています。
特に岩畳のおいたちや荒川による大地の侵食など、「地球の窓」と呼ばれる長瀞の地質に関する資料を紹介しています。なぜ長瀞が「地球の窓」と言われるのか、その理由を知ることができます。
常設展示の他、年に数回、第2展示室で企画展が開催されます。これにより、訪れるたびに新しい発見があることでしょう。
資料館の目の前には酒蔵「長瀞蔵」があり、地元の文化と歴史をさらに感じることができます。
旧新井家住宅は、江戸時代中期(1725年)に築かれた養蚕農家の民家(旧新井家住宅)を移築しており、昭和46年(1971年)に国の重要文化財(建造物)に指定されました。もともとは長瀞町大字中野上にあった養蚕農家の民家を、現在の場所に移築したものです。
建物の構造は、かつて秩父地方に多く見られた養蚕農家の姿をよく表しており、最も大きな特徴は、屋根が板葺きであることです。秩父地方では、板葺屋根は藁葺屋根とならんでよく見かけられましたが、現在では旧新井家住宅だけがその姿を残しています。
旧新井家住宅は、大きな居間を持ち、居間や土間まわりの柱や梁は太く、いかにも農家らしい構造です。建物の外観の意匠も優れており、秩父地方に広く分布していた板葺農家の典型をよく表しています。外観の意匠も優れています。
長瀞町郷土資料館を訪れることで、長瀞の歴史や文化、地質について深く学ぶことができるでしょう。