埼玉県秩父市にある橋立鍾乳洞は、洞内の3分の2以上が竪穴という構造の、国内でも珍しい縦穴型の鍾乳洞として知られています。長い年月をかけて自然が作り出した神秘的な空間は、訪れる人を魅了します。秩父三十四箇所28番の石龍山橋立堂に隣接し、埼玉県内で唯一の観光です。1936年(昭和11年)3月31日に埼玉県の天然記念物に指定されました。
「大陸の時代」の付加体である秩父帯の中には、「大洋の時代」に海底でできた石灰岩などの岩体がブロック状に取り込まれています。武甲山は約2億数千万年前に誕生した石灰岩体であり、橋立鍾乳洞では石灰岩に刻まれた自然の造形を見ることができます。
橋立鍾乳洞は、全山石灰岩といわれる武甲山の西端の麓に位置しています。長い間の雨水によって石灰岩が溶かされ、洞内は2つの大房に分かれています。洞内には「鍾乳石」「石筍」「石柱」が数多くあり、それらには弁天大黒、菩薩、五百羅漢などの名称が付けられ、古くからの信仰の跡を残しています。
橋立鍾乳洞は、全国でも数少ない縦穴の鍾乳洞で、入口と出口の高低差が約33mあります。規模は大きくないものの、洞内は階段を上る珍しい形態になっており、数多くの石筍・鍾乳石・石柱が見られます。
橋立鍾乳洞は、南向きの高さ約40mの大岩壁の下にある県内唯一の照明などが整備された縦穴型の観光洞です。鍾乳石や石筍、石柱、カーテン、フローストンなどの洞窟生成物は、上方の出口付近に比較的よく発達しています。県の天然記念物に指定されているほか、市の史跡にも指定されています。
武甲山の石灰岩体の西端に位置する橋立鍾乳洞は、南向きの高さ約75mの大岩壁の下にあります。この地域は、約2億年前に火山活動によって形成され、プレートの動きによって運ばれてきた石灰岩が形成されました。また、この地域には縄文時代草創期から古墳時代の岩陰遺跡が発掘されており、秩父市指定史跡として保護されています。
第二十八番 石龍山 橋立堂には、江戸時代に流行した『観音霊験記』という逸話が残されています。逸話によれば、昔この村の領主の郡司が悪竜になり人や馬を喰っていたところ、村人がこの堂に祈念し、御堂の中から白馬が出てきて悪竜に呑まれたことで、悪竜が悟りを得て洞内の石となったという話です。鍾乳洞内の洞窟生成物は、この逸話に基づいて「石になった竜の姿」として語り継がれています。
札所28番「石龍山 橋立堂」は、高さ80メートルほどの石灰岩の直立した岩壁の下に建てられた歴史あるお堂です。このお堂は石灰岩岩壁下に食い込むように建てられており、三間四面、方形屋根の朱塗りで、江戸時代中期に建築されました。荘厳な雰囲気が漂うこの場所には、古くから多くの信仰を集めています。
橋立堂の本尊は馬頭観世音であり、縁日には馬を飼う人々の信仰を集めています。多くの絵馬が奉納されており、その姿は圧巻です。本尊の馬頭観世音像は高さ約26センチメートルの小さな像ですが、鎌倉時代の作であり、市指定文化財となっています。
馬頭観世音を本尊とする札所は非常に珍しく、日本百番観音霊場の中でも、当寺と西国第二十九番・青葉山松尾寺のみです。馬が唯一の交通手段であった時代、縁日には多くの人々が飼馬をひいて参詣し、賑わいを見せていました。現代でも、交通安全の祈願のために遠方からも多くの人々が訪れています。
秩父鉄道「浦山口駅」から川の流れを聞きながら歩みを進めると、そそり立つ岩壁が目に入ります。石段を上がった正面には、三間四面の縁を回した朱塗りの観音堂があり、高さ65メートルの切り立った岩壁が覆いかぶさるように迫ってきます。江戸中期の建築とされるこのお堂は、壮大な自然の中に佇み、訪れる人々に深い感動を与えます。
橋立堂の横には橋立鍾乳洞があります。この鍾乳洞は、昔から胎内くぐりの霊場として巡礼者に親しまれてきました。橋立鍾乳洞は、縦穴型の珍しい鍾乳洞で、県の天然記念物に指定されています。洞内には数多くの鍾乳石や石筍が点在し、自然の造形美を楽しむことができます。
本堂の右手には「馬堂」と呼ばれる小堂があり、左甚五郎作と伝えられる二頭の馬の木像が安置されています。また、本堂には馬が描かれた絵馬や、境内には馬の銅像など、馬にゆかりのあるものが多く見られます。これらは、交通の安全や馬の守り本尊として信仰を集めてきた証です。
馬堂は、橋立堂の本尊である馬頭観世音に深く関連しており、馬にゆかりのある多くの品々が奉納されています。左甚五郎作とされる二頭の馬の木像は特に有名で、その精巧な彫刻技術は一見の価値があります。
橋立鍾乳洞は、自然の美しさと歴史的な背景を兼ね備えた観光地として、多くの人々に愛されています。洞内の見学路は総延長約140mで、一番低い地点から高い地点までの高低差は約30mあります。鍾乳石や石筍、石柱などの洞窟生成物は、自然が作り上げた芸術品とも言える美しさを持ち、訪れる人々を魅了します。
橋立鍾乳洞へのアクセスは、秩父市内からの公共交通機関や車を利用することができます。見学の際は、洞内の階段や急な斜面に注意し、適切な靴や服装で訪れることをおすすめします。また、鍾乳洞内は自然のままの状態が保たれているため、見学時には自然を傷つけないように注意しましょう。
橋立鍾乳洞は、埼玉県秩父市に位置する県内唯一の観光洞で、自然の造形美と歴史的な背景を持つ素晴らしいスポットです。洞内の竪穴構造や数多くの鍾乳石・石筍・石柱など、自然が作り上げた美しい景観を楽しむことができます。訪れる際には、その魅力を十分に堪能し、自然の神秘に触れてみてください。