埼玉県秩父市にある「やまとーあーとみゅーじあむ」は、日本を代表する版画家・棟方志功の作品を数多く収蔵し、その芸術世界を堪能できる美術館です。豊かな自然に囲まれた羊山公園内に位置し、四季折々の風景と調和しながら、来館者を迎えます。
棟方志功の作品群は、質・量ともに日本有数と評価されています。元気溌剌とした棟方志功の世界を心ゆくまで堪能できます。また、志功ゆかりの作家群の作品も収蔵しており、絵画や陶芸作品など、さまざまな芸術作品を楽しむことができます。美術館のロビーからは、四季折々の風景を眺めながら、静かな展示空間で志功の息遣いを感じることができます。
平成14年と15年には、棟方志功生誕百年記念展が実施されました。志功の常設展示に加え、林武、熊谷守一、鈴木信太郎、ベルナール・ビュッフェなどの絵画や、志功と関係のあった人々の絵画、陶芸作品も収蔵されています。この美術館は、平成4年7月に開館し、平成8年に財団法人となりました。
美術館が所在する羊山公園は、秩父市の東側に位置し、県立武甲自然公園の西北部に含まれる緑豊かな自然に囲まれた公園です。春には芝桜が咲き誇り、訪れる人々を迎えます。公園は、市民のいこいの場として親しまれています。
羊山公園の南側に位置する芝桜の丘は、春になると白やピンク、淡いブルーの花で一面が彩られます。約17,600平方メートルの広さに10品種、40万株以上の芝桜が植栽され、多くの人々が散策に訪れます。
見晴しの丘は、古くから桜の名所として知られています。丘からは秩父市街地を一望でき、「やまとーあーとみゅーじあむ」や「武甲山資料館」が公園施設としてあります。羊山公園の設計を担当したのは、「日本の公園の父」と呼ばれる本多静六博士です。
芝桜の丘からほど近い場所に「ふれあい牧場」があります。以前、羊山公園には「埼玉県種畜場秩父分場」があり、「羊山」という名前の由来となっています。現在、この牧場では日本コリデール種の羊を飼育しています。
棟方 志功(むなかた しこう、1903年9月5日 - 1975年9月13日)は、日本の板画家であり、従三位の地位を持つ人物です。青森県青森市で生まれ、川上澄生の版画「初夏の風」を見たことがきっかけで版画家になることを決意しました。1942年以降、棟方は版画を「板画」と称し、一貫して木版の特性を生かした作品を制作しました。
棟方は幼少期から家業を手伝いながら絵画に興味を持ち、自然美とは異なる人工美としての絵画に目覚めました。1921年、親友たちと「青光画社」を結成し、洋画のグループ展覧会を開催しました。その後、上京して中村不折の門を叩きましたが、油彩画では落選が続きました。
1926年、川上澄生の版画『初夏の風』に感動し、版画家になることを決意しました。平塚運一に師事し、版画を学びながら、本の仕事や靴の修理、納豆売りで生計を立てました。1930年には帝展で「雑園」(油彩)が初入選し、その後、日本版画協会会員となりました。
棟方の代表作としては、『大和し美し』『観音経板画巻』『繧𦅘頌・崑崙板画巻』などがあります。1941年には大原總一郎邸で襖絵『御群鯉図』を描き、1942年には随筆集『板散華』を刊行しました。1951年にはスイスで開催された第二回国際版画展で優秀賞を受賞し、1955年にはサンパウロ・ビエンナーレで版画部門の最高賞を受賞しました。
棟方は晩年にも多くの作品を制作し続けました。1961年には京都法輪寺より法橋位を受け、1962年には富山県日石寺より法眼位を受けました。彼の作品は国内外で高く評価され、現在も多くの美術館やギャラリーで展示されています。棟方志功の芸術は、今なお多くの人々に愛されています。